親知らずの抜歯

親知らずの抜歯

「親知らず」とは、前から数えて8番目の歯です。

第三大臼歯、智歯ともいいます。この歯はだいたい20歳前後で生えてきます。親知らずを抜歯したほうが良い場合はいろいろあります。

  • 親知らず自体が虫歯になって痛むが、器具が届かなくて適切な治療を行えない場合
  • 上の親知らずが伸びてきて、下の一番後ろ歯の奥の歯肉を傷つけて痛む場合
  • 中途半端に生えていて歯の一部が見えていて周囲歯肉が炎症を起こして痛む場合
  • 親知らずの周りの清掃が困難で、手前の7番目の歯の根っこの部分が虫歯になってきている場合 (これは進行状態によっては7番目の歯も巻き添えになって残せないことがあるので注意)
  • 横向きに生えてくる親知らずが7番目の歯を後ろから押して歯並びが悪くなる恐れがある場合

親知らず

特に。風邪をひいたり仕事忙しかったり長期旅行にでかけたり等で体の抵抗力が落ちた時に何度も痛み出す場合があります。
私自身、ドイツ、オーストリアに一週間旅行に行ったときに親知らずがずっと腫れて痛くてせっかくドイツに来たのにビールもソーセージもパンも食べられないといったことがあって帰国後すぐ抜歯してもらったことがあります。

親知らずは、できれば20代前半のうちに抜歯した方がいいです。年を重ねるにつれて親知らずの根っこと周囲の骨とが癒着してしまいかなりの難抜歯となることが多いからです。また、歯肉炎、歯周病といった慢性的炎症が親知らずの周りにあると麻酔も効きにくくなります。そして、抜歯した後の回復も、若いころの方が良好です。

また、女性の場合、妊娠するとホルモンバランスが変わり、妊娠初期(0〜3ヵ月)から口腔内細菌叢が変わります。この時期、つわりもあるため歯ブラシで磨くのにも苦労し間食も多くなり、歯肉炎を起こすことが多くなります(妊娠性歯肉炎)。そこで親知らずの周囲に炎症を起こして大きく腫れて痛みが強くでてしまっても胎児への影響を考えると積極的治療は何もできないため本当にかわいそうだけど何も手を出せないというなんとも悲しいことになってしまいます。ただし、抜歯をしなくてもいい場合もあります。

  • 手前の7番目の歯と同じように生えてきていて、歯磨きも特に問題なくできる場合。
  • 骨の中に完全に埋まっていて、レントゲン写真上問題が無い場合。
  • その他、特に悪影響を及ぼすことがないと判断された場合。

また、親知らずを抜かずに虫歯にもせずに保存しておくことができれば将来、手前の6、7番目の歯が駄目になってしまった時、ブリッジの支台や移植歯として使える可能性もあります。

親知らずの抜歯術に関しては、個人差というより個歯差があります。特に下顎の親知らずの場合、下顎との距離や埋まってる向き、根っこの曲がり方によっては取り出すのに何分割もしなければなりません。2〜3日目をピークに、思いっきり腫れて痛みます。そのこと前提に予定を組めるときに抜歯術を行うのがよいでしょう。
また、下顎の中を走っている下顎管という下歯槽神経、動静脈が通っている管があるためこれを損傷しないように、親知らずの根っことの距離・位置関係の精査が必要になってきます。

レントゲンCT室

レントゲンCT室。パノラマ、デンタルX線写真に加えてCTも撮影できます。下顎の水平埋伏智歯抜歯術を行っているので、下顎管との関係の精査には欠かせません。

当院では必要のある患者さんの場合は歯科用CTを用いて精査し、安全に、安心して手術を受けられるようにしております。
そして、抜歯後の痛み・腫れ・麻痺の可能性などのトラブルについても説明していきます。

費用は保険診療で行えますが、最初のパノラマレントゲン写真と診査で3000円ほど。

簡単なケース(きれいに生えてきている場合)では普通に抜歯できるため約870〜1,530円。
骨の中に半分埋まっている場合では、歯肉切開、粘膜骨膜弁剥離、分割抜歯、縫合で通常2針で約5000円程度。

しかし、下に示す症例のようにCT撮影が必要な場合は15000円くらいかかります。

術中の写真は一般の人には抵抗あると思うのでパノラマと分割して抜いた歯の写真のみお見せします。

右下8番 向きは抜きやすそうだが歯根が曲がっていて下顎管と接してるように見えるケース

右下8番28歳男性。 向きはすこし斜め上向いていて抜きやすそうだが、手前の歯に親知らずの頭が引っ掛かっているので、どうしても頭は割らないと出せません。それは通常の水平埋伏智歯抜歯と変わらないのでいいのですが、大きな問題は歯根が曲がっていて下顎管と接してるように見えるところです。歯根の先端部分付近の下顎菅もすこし曲がっているようにみえます。これって、親知らずができてきて歯根が伸びてくるときに下顎菅が押されて曲がったのかな?という危険を感じます。歯根が曲がっているので抜歯するときの力のかけ方の方向を間違えば一大事。例えば手前にひっかけて奥に向けて力をかけると根っこの先端が折れてしまうと思います。奥から手前に回転させるように動かさないといけません。歯根が2つに分かれているので、歯冠歯根分割後に歯根を抜去するときに動かなければ、歯根も手前と奥とで分割する必要があるかもしれません。

CTとって精査後、粘膜骨膜弁剥離、歯冠歯根分割、歯根の湾曲を考慮し下顎管損傷しないようにへーベルで動かして抜歯したケース。

といろいろ考えつつCTとって精査後、粘膜骨膜弁剥離、歯冠歯根分割、歯根の湾曲を考慮し下顎管損傷しないようにへーベルで動かしたら、案外歯根分割せず動かせて抜歯できました。いろいろ考えて1時間予約取ってたのですが15分ほどですぐ終わって30分で帰って行かれました。術後の経過も良好、知覚異常なども全くありませんでした。

 

埋まってる向きが難しく下顎骨とも下顎菅とも近く歯根の分割も視野に入れてCT撮影して精査した後に抜歯した症例。

今度は26歳女性の方。左上の親知らずは挺出してきてる上に虫歯になっているので、鋭縁削って周りを傷つけないようにして後で抜歯しました。この方の左下の親知らず、手前の歯にあまり食い込んでいる感じはしないのが救いなのですが、埋まってる向きが斜め下向きでやや難しく、歯冠(歯頚部)が下顎骨とちかく、しかも女性、口腔内は小さく操作しづらそうです。左上の親知らずが虫歯になっているのも、下顎骨の筋突起という骨と親知らずが近すぎて歯ブラシが入らないため非常に磨きにくい状態だったからと思います。左下親知らずの根尖はこの2次元的なパノラマレントゲン写真では下顎菅と重なって見えます。絶対にCT撮影を行い三次元的にみて根尖と下顎菅との関係を精査しなければなりません。歯根も二股に分かれているので、歯根の分割も視野に入れてCT撮影して精査した後に抜歯しました。

歯冠歯根分割後、歯根の頬側にグルーブを掘って、逆ヘーベル(九大の先輩にして元県中口腔外科部長の高松先生から譲り受けた品)を用いて、そのまま手前に引っ張り出せました。

粘膜骨膜弁剥離、九州大学の口腔外科の先生たち皆さんが常々口にする「直視、直達」の原則に基づいてバーの先端を明視しつつ歯冠歯根分割。その後、歯根の頬側にグルーブを掘って、逆ヘーベル(九大の大先輩の先生から譲り受けた品)を用いて、そのまま手前に引っ張り出せました。

 

ただし、当院で精査後、これはさすがに何かあった時のために静脈ルート(点滴)取ってやらないと!というケースでは、レントゲン写真、CT画像を添えて地域中核病院への紹介となります。

  1. 価格

通常:約870〜1,530円。(保険適用)
難しいケース(骨の中にほとんど埋まっている場合):歯肉切開、粘膜骨膜弁剥離、分割抜歯、縫合は通常2針で約3,300円。

平均費用:親知らずの抜歯1本あたり 5,000円前後、CT撮影込みの場合、7000円前後

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